定年が近づき、これからどこでどのように暮らそうかと考え始めた方もいるのではないでしょうか。住み替えを考えても、新しい土地で仕事を見つけ、住まいも別に探すのは手間がかかります。年齢を重ねるほど、部屋を借りにくくなるのではないかという心配も出てきますよね。そこで選択肢に入ってくるのが、住まいと仕事を一緒に決める仕事付き移住です。
ただし、50代・60代が長く暮らしていくには、働ける期間や仕事を終えた後の暮らしまで見て選ぶことが欠かせません。この記事では、50代・60代が仕事付き移住で長く安心して暮らすための選び方と注意点を、家族構成ごとの考え方とあわせて解説します。
仕事付き移住とは?
仕事付き移住とは、移り住む先での仕事と住まいを一緒に決める移住の方法です。仕事が決まってから引っ越すため、移住した後に収入が途切れる心配が少なく、住まいを仕事先が用意してくれるケースも多くあります。
仕事付き移住には、数か月で終わる短期の働き方と、年単位で暮らし続ける長期の働き方があります。
| 短期で働く移住 | 長く暮らす移住 | |
| 主な仕事 | リゾートバイト、期間工 | 住み込みの管理人、社宅のある会社への転職 |
| 期間 | 数か月〜1年ほど | 数年以上 |
| 雇用形態 | アルバイト、期間従業員 | 正社員、契約社員 |
| 住まい | 寮や社員寮 | 職場への住み込み、社宅 |
| 多い年代 | 20代〜30代 | 50代・60代を含む幅広い年代 |
| 終わった後の暮らし | 元の家に戻るか、次の仕事と住まいを探す | 仕事を続けるかぎり住み続けられる |
短期の働き方は、気になる土地でお試しで暮らしてみたい人に向いています。ただ、契約が終わるたびに次の仕事と住まいを探す必要があり、50代・60代が腰を落ち着けるには不安が残るでしょう。長く暮らすことを考えるなら、その土地で何年暮らせるか、仕事を終えた後にどこで暮らすかまで見すえて選びたいところです。
仕事付き移住の主な形

仕事付き移住と一口にいっても、住まいと仕事の結びつき方は形によって違います。職場にそのまま住むのか、職場とは別の住まいを会社が用意するのかで、暮らしの自由度も変わってくるでしょう。さらに、国や自治体の制度を使って移り住む方法もあります。それぞれの形の特徴を知っておくと、自分が望む暮らしに近いのはどれかが見えてきます。
住み込みで働く
住み込みは、職場の建物に住みながら働く形です。寮やマンションの管理人、旅館やホテルのスタッフなどが代表的で、住まいが仕事についてくるため、引っ越しと就職を一度に済ませられます。
住み込みというと地方へ移るイメージがあるかもしれません。しかし実際には、地方から都市部の寮や施設へ移る人もいます。雪の多い地域から雪のない地域へ移るなど、暮らしやすさを求めて住む場所を選び直す人にとっても、住み込みは現実的な手段です。
社宅や寮のある会社に転職する
社宅や独身寮のある会社に転職し、会社が用意した住まいに移る方法もあります。住み込みとの違いは、仕事の場所と住まいが分かれている点です。職場とは別に暮らせるため、仕事が終われば職場から離れられ、休みの日も気持ちを切り替えやすいのがよいところです。
一方で、家賃の一部を自分で負担する会社が多く、住み込みほど住居費を抑えられない場合があります。社宅に住める期間や年齢に決まりがある会社もあるため、何年住めるのかは入社前に聞いておきましょう。
地域おこし協力隊などの制度を使う
地域おこし協力隊などの制度は、都市部から地方へ移り住み、地域を元気にする活動です。自治体から任命を受けて、特産品づくりや観光の手伝いなどに携わります。
活動中は報酬が支払われ、住まいを自治体が用意してくれる地域もあります。ただし任期はおおむね1年から3年で、任期が終わった後の仕事と住まいは自分で見つけなければなりません。長く暮らしたい場合は、任期後もその土地で働き続けられるかまで考えて応募することが大切です。
50代・60代が仕事付き移住で得られること
仕事付き移住は、若い人にとってはお試しで暮らせる手軽さが魅力です。50代・60代にとってはそれとは別に、これからの暮らしを支えるよさがあります。老後のお金や住まいの心配は、年齢を重ねるほど切実になっていくものです。仕事付き移住ならではのメリットを知っておくと、定年後の暮らし方を選ぶときの判断材料として役立ちます。
家賃と光熱費が減り、老後のお金を残しやすい
住み込みの仕事のなかには、家賃や光熱費を会社が負担してくれる求人があります。毎月の住居費がかからなくなれば、その分を貯金に回せるため、老後に向けたお金を残しやすくなるでしょう。
例えば、これまで家賃と光熱費に毎月10万円かかっていた場合、1年で120万円、5年では600万円もの差が生まれます。年金だけで暮らせるか不安を感じている人にとって、働きながらお金を貯められる期間は心強い支えになるはずです。
年齢を理由に住まいを借りにくくなる心配が減る
賃貸住宅は、年齢を重ねると入居審査が通りにくくなることがあります。家賃を支払えなくなったり、部屋のなかで倒れたりするリスクを家主が心配し、高齢の方の入居に慎重になるケースがあるためです。
仕事付き移住で会社が住まいを用意してくれる場合は、自分で賃貸契約を結ぶ必要がありません。部屋探しで年齢を理由に断られる不安から離れられるのも、50代・60代にとって大きな利点です。
新しい土地で役割と人とのつながりができる
定年を迎えると、毎日通う場所や人と話す機会が急に減ってしまいがちです。仕事付き移住なら、移り住んだその日から職場という居場所があり、役割を持って暮らせます。仕事を通して地域の人や職場の仲間と知り合えるため、知り合いのいない土地でも孤立しにくくなるはずです。誰かの役に立っている実感は、毎日の張り合いにもつながります。
住み込みの仕事付き移住ならではの注意点

住まいと仕事が一緒になる住み込みは、暮らしの負担を減らせる一方で、住み込みだからこそ気をつけたい点も出てきます。メリットの裏側にある制約を知らないまま決めると、移り住んでから戸惑うことになりかねません。なかでも、仕事を辞めた後の住まいや今の家の扱いは、移住する前に決めておきたいことです。思わぬ後悔をしないよう、住み込みならではの注意点を事前に押さえておきましょう。
仕事を辞めると住まいも手放すことになる
住み込みの仕事では、仕事を辞めると住んでいる部屋を出なければなりません。体調を崩して働けなくなったときや、職場が合わなかったときでも、仕事と住まいを同時に失ってしまうのが住み込みの難しさです。そのため、辞めた後にどこで暮らすかを先に考えておく必要があります。元の家を残しておく、子どもの近くに住むなど、いくつかの選択肢を持っておくと安心です。
仕事と暮らしの境目があいまいになる
住み込みでは、職場と住まいが同じ建物にあります。通勤がない手軽さがある反面、休みの日も職場にいる状態になりやすく、気持ちが休まりにくいと感じる人もいます。例えば、休みの日でも、困っている人に声をかけられれば対応したくなるものです。休日は外へ出かける、自分の部屋で過ごす時間を大切にするなど、意識して仕事から離れる工夫があると長く続けやすくなります。
今の家をどうするか決めなければならない
持ち家がある人は、移住する前に今の家の扱いを決めておくことが欠かせません。主な選択肢は、家を残す、人に貸す、手放すの3つです。家を残しておけば、仕事を辞めた後に戻る場所があります。ただし、住んでいない間も固定資産税や修繕の費用はかかり、空き家のまま放っておくと傷みも進みます。
人に貸せば家賃収入を得られる一方、戻りたいときにすぐには戻れません。手放す場合はまとまったお金が手に入りますが、帰る家はなくなります。どれを選ぶかは、仕事を終えた後にどこで暮らしたいかから逆算して考えるとよいでしょう。
持ち家をどうするかという考え方については、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はあわせてご確認ください。
夫婦・親子・おひとりさまで変わる仕事付き移住の考え方
仕事付き移住は、誰と移り住むかによって、選べる仕事も気をつけることも変わります。二人で働く求人を選べるのか、一人で応募できる求人を探すのかで、候補になる仕事の幅にも差が出るからです。自分たちの家族構成に近い考え方を知っておけば、求人を探すときに見るべきところがはっきりします。
夫婦で移住する場合
夫婦で移住する場合は、二人一組で働く求人を選べるのが大きな強みです。寮やマンションの管理人など、夫婦での応募を前提にした住み込みの仕事は多く、二人分の収入を得ながら住居費を抑えられます。
注意したいのは、どちらかが働けなくなったときのことです。二人一組の仕事では、一人が体調を崩すと、もう一人も仕事を続けにくくなる場合があります。病気やけがで休むときに代わりの人がいるか、一人になっても働き続けられる仕組みがあるかを、応募の前に確かめておきましょう。
親子・家族で移住する場合
親子で移住する場合は、親の老後と子どもの働き方を一緒に考えることが大切です。親の体力がいつまで続くか、介護が必要になったときにどうするかによって、選ぶべき仕事は変わります。子どもがこの先どのようなキャリアを描きたいかも、あわせて話しておきたいところです。
住み込みの求人のなかには、夫婦だけでなく家族2名で働ける求人もあります。親子で同じ職場に住み込めば、親のそばにいながら働けるうえ、住居費も抑えられます。ただ、親子での応募を受け付けているかは求人によって違うため、気になる求人があれば問い合わせてみるとよいでしょう。親子でできる仕事については、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はあわせてご覧ください。
一人で移住する場合
一人で移住する場合は、単身で応募できる求人を選びましょう。住み込みの管理人やホテルのスタッフなど、一人で働ける求人も少なくありません。気をつけたいのは、知り合いのいない土地で孤立してしまうことです。仕事以外の時間を一人で過ごすことが多くなると、体調の変化に気づいてくれる人がいない状態になりがちです。地域の集まりに参加したり、職場の仲間と日頃から言葉を交わしたりと、人とのつながりを意識して持つようにすると、新しい土地でも安心して暮らせます。
仕事付き移住の探し方と、決める前に確かめたいこと

仕事付き移住の情報は、主に次の4つの場所で探せます。
- 自治体の移住相談窓口:移住先の仕事や住まい、支援制度について相談できる
- 移住イベント:複数の自治体や企業の話を一度に聞ける
- 住み込みの求人サイト:住まい付きの仕事を条件で絞り込んで探せる
- 会社の説明会や見学:実際の職場や住まいを自分の目で見られる
気になる仕事が見つかったら、その土地で何年暮らしたいかを考えましょう。5年なのか、この先ずっとなのかによって、選ぶ仕事も住まいも違ってきます。そして、その仕事を何歳まで続けられるかも確かめておく必要があります。体力が要る仕事や、年齢の上限がある仕事もあるため、自分が働きたい年齢まで続けられるかを見極めることが大切です。
さらに、仕事を終えたらどこに住むかも事前に確認しておきたいポイントです。住み込みの場合は、辞めた後の住まいの当てがあるかで安心感が大きく違います。家族の介護や自分の通院、子どもや孫との距離も考えておきましょう。移住先から家族のもとへ通える距離か、かかりつけの病院を変えても大丈夫かまで確かめておくと、移り住んでからの心配を減らせます。
長く暮らせる仕事付き移住の例|寮長寮母という働き方
長く暮らせる仕事付き移住の例として、学生寮や社員寮に住み込む寮長寮母という働き方があります。寮長寮母は、寮生が毎日を安心して過ごせるよう、寮の管理と食事づくりを担う仕事です。求人は北海道から九州まで全国にあり、特別な資格や経験がなくても始められます。
待遇の面では、住居費と光熱費を会社が負担する場合が多いため、毎月の暮らしの費用を大きく抑えることも可能です。採用時の引っ越し費用も会社が負担してくれるケースもありますが、遠方から移る場合は負担額に上限はないかを事前に聞いておくと計画を立てやすいはずです。
実際に、北海道で運送業をしていた寮長は、子どもの独立をきっかけに、体力面や毎年の雪かきの負担を考えて雪のない地域での暮らしを選びました。住み込みの仕事なら地方からでも移りやすく、住居費がかからない経済的なメリットも大きいと話しています。北海道から関東の寮へ移り住んだ寮長寮母のお話は、以下のインタビューで詳しく紹介していますので、気になる方はあわせてご覧ください。
まとめ
仕事付き移住は、住まいと仕事を一度に決められるため、定年前後の住み替えの負担を減らせる方法です。50代・60代が選ぶなら仕事の内容だけでなく、その土地で何年暮らしたいかから考えることがポイントです。
仕事を辞めた後の住まいや家族との距離まで見通しておけば、移り住んだ後も安心して暮らし続けられます。これからの暮らしを長い目で思い描きながら、自分たちに合った仕事付き移住の形を見つけてください。
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