神奈川県大型寮

松本夫妻

夫婦の絆が生んだ新たな人生の選択。12年の経験が語る寮長寮母という働き方

奥さまの視力障害をきっかけに、夫婦で過ごせる仕事を求めて寮長寮母の道を選んだ松本ご夫妻。約12年間にわたり大型寮で日本人学生と留学生の生活を支え続けています。
現在は寮長が地区長を兼任し、約50棟の寮を統括する立場でもあります。未経験から始めた仕事で築いた豊かな経験と、寮生との心温まる交流について詳しく伺いました。夫婦で歩む第二の人生の実情をお伝えします。

——まずはお二人の自己紹介をお願いします。

寮長:寮長の松本と申します。前職はホテル関係の仕事を27年ほどやっていました。やりがいはあったのですが、朝早くから夜遅くまで働く生活で・・・
妻の体調を考えると続けていくのが難しくなり、転職を決意しました。今は共立メンテナンスで寮長を務めています。

寮母:寮母の松本です。私はずっと専業主婦でした。外で働いた経験はほとんどなかったので不安もありましたが、夫と一緒ならやってみようと決めました。

——寮長寮母という働き方を知ったきっかけを教えてください。

寮長:妻が目の病気になり、日常生活に支障をきたすようになってしまったんです。当時の私は早朝に出勤し、日付が変わる頃に帰宅する生活を繰り返しており、妻を一人にしておくのは難しい状況でした。
そこで、夫婦で一緒にいられる仕事はないかと探していて、共立メンテナンスに巡り合いました。

寮母:幸い良い病院に巡り合うことができ、適切な治療を受けることで目の状態は大幅に改善し、日常生活に支障なく仕事も問題なく行えるようになりました。当時は本当に不安でしたが、今では安心して過ごせています。

——他のお仕事も検討されましたか?

寮長:ハローワークの担当者にアドバイスを受けながら転職先を探していたのですが、妻をサポートできる時間や環境を持てることが最も重要だったので、他の会社についてはあまりじっくり検討しませんでした。当時は早く仕事を決めなければいけないという時間的な制約もあり、じっくり探していられなかったというのもあります。

寮母:私としては、病気のこともありましたし、寮長と一緒にいられる時間が増えればそれだけでありがたく、この働き方に賛同しました。子どもも大きくなっていて身の回りのことはある程度自分でできるようになっていましたし、ちょうど大学生の娘がおり、こちら方面の大学に通いやすくなることも好条件でした。

——入社前に不安だったことはありますか?

寮長:未経験の仕事でしたから、心配しかありませんでした。夫婦で一緒に勤務することも初めてでしたし、どのような業務内容かある程度の情報はいただいていましたが、イメージできないことも多かったですね。

——現在のお仕事内容について詳しく教えてください。

寮長:管理業務を担当しており、寮生の皆さんに安心してお過ごしいただける安全な環境を提供することを心がけています。朝は早く、夜は遅い勤務になりますが、設備メンテナンスなどは業者さんがきてくれるので常に肉体労働というわけではありません。
寮生さんとのやりとりも発生しますが、学生寮という特性を生かして適度な距離感を保ちながら接しています。

おおまかな1日の流れは、朝7時の勤務開始頃からゴミステーションを開け、朝の巡回を行います。9時頃からは来客対応、宅配便や郵便物の受付、外来対応を主に午前中に行い、午後は台帳の準備や夜の準備に備えてお風呂にお湯を張るなどの業務を行います。
夜は寮生の安否確認を行い、業務終了となります。

寮母:私は主に調理を担当しています。料理は家族に振る舞うくらいでしたから、大量調理への転換で当初は不安でしたが、優しい先輩方に相談しながら少しずつ慣れていきました。

朝5時から厨房に入って朝食の準備を行い、7時から寮生への食事提供を開始します。その後発注業務を9時30分頃まで行い、休憩を挟んで午後3時30分頃に再び厨房に入ります。

午後は、清掃から始めて4時頃から調理を開始し、18時から21時30分までの夕食提供に備えます。21時30分に再度厨房で翌日の準備を確認して22時に業務終了となります。

寮長:それぞれの役割分担は、基本的には管理と調理で分かれていますが、それぞれに忙しい時期があるため、お互いにフォローし合いながら業務を進めています。繁忙期に当たる春の入退寮時期などは協力して対応し、調理の仕込みが大変な時は手伝いに入ることもあります。

また、私は神奈川エリアの地区長として53棟の管理を担当しています。各寮の寮長寮母さんと会社の橋渡しをするのが主な責務です。
個人では会社に言いにくいことや、会社と話す機会が少ない方の思いを聞いて会社に伝え、対策を検討してもらうという調整役を務めています。

新人研修も担当しており、配属される方はまず私たちの研修を受けてから各寮に向かいます。

——調理のお仕事について、未経験の方へのアドバイスをお願いします。

寮母:正直に申し上げると調理は大変な仕事です。朝早くから夜遅くまでの勤務ですから、体力的にもハードな時もあります。ただし、調理はパートスタッフさんのサポートも入るので、一人で抱え込まず周囲と協力しながら働けるのは助かります。

また調理だけでなく衛生についても意識することが大切です。数年前からHACCP(ハサップ)という衛生管理が導入され、より厳格な管理が求められるようになりました。こちらに関しても、パートスタッフさんと協力しながら日々取り組んでいます。

寮長:調理は基本的に指定のレシピがあり、大根の短冊切りや、イチョウ切りなど、切り方まで細かく指示されています。そのため、調理未経験の方でも、レシピに沿って作業すればひととおりの業務はこなせるようになりますよ。
むしろ、調理経験のある方ほど自己流になりがちで、指示通りに作業することが難しいかもしれませんね。

寮母:寮長の話した通り、調理はレシピ通りに作業することが大切です。調理経験のある方より、家庭料理を作ってきた主婦さんの方がていねいに調理されているように感じます。

——お仕事で気をつけていることや心がけていることはありますか?

寮長:寮生とのコミュニケーションですね。適度な距離感を保ちつつ、プライベートな情報には立ち入らないよう注意しています。現在の学業やアルバイト、部活動などの話は楽しく聞きますが、家族や個人の話などは一切聞かないようにしています。
また、男女混在の寮のため、女性の部屋に入室する際は必ず寮母が同行するようにしています。

管理や見守り業務の一環で、非常口や避難経路の確認は毎日のルーティンとして行っており、安心安全な環境の提供を心がけています。

寮母:私は食の衛生面を特に重視しています。寮生に安全で安心な、美味しい食事を提供できるよう日々努めています。

——寮生とのやり取りで、心に残っているエピソードはありますか?

寮長:ほぼ毎日寮生とのやり取りがあるので、ちょっとしたエピソードならたくさんありますよ。ここは日本人の学生と留学生が半々の寮で、留学生は帰国後も来日の際に遊びに来てくれることがあります。
日本人の卒寮生もよく遊びにきてくれて、以前、寮の近くにあったお気に入りの飲食店が閉店すると聞きつけ、食事後に私たちに会いに来てくれた社会人もいました。

また、驚くことに寮生だった方が共立メンテナンスに入社されることも多く、毎年のように何名かいらっしゃるんですよね。私たちの仕事姿を見て、自分も働いてみたいと感じてくれていたら嬉しいです。

寮母:私も退寮された方がよく会いに来てくださるのは嬉しいですね。留学生、日本人関係なく、卒業して時間が経っても私たちの顔を見に足を運んでくれることが何より嬉しく、寮での生活が皆さんにとって特別な時間だったのだと実感します。

——この仕事でやりがいを感じる瞬間を教えてください。

寮長:先ほど話したように寮生とのやりとりが常に発生するので、彼らの成長を実感すると、この仕事を頑張ってきてよかったという気持ちになります。入寮したときはまだ幼さの残っていた寮生が、4年間で大人に成長し、社会人になっていく過程を見守れるのはこの仕事ならでは。最初は挨拶もできなかった学生が、退寮後社会人として会いに来てくれた時は、立派になった姿に感動しますよ。

留学生の方もその後の活躍を耳にすると嬉しくなりますね。一度帰国してから再び日本で英語教師として活躍している報告を受けるなど、若い方々の成長を間近で見られることがやりがいにつながっていきます。

——年齢や体力面で不安がある方に、伝えたいことはありますか

寮長:体力が必要といっても、1日中身体を動かすような仕事ではありませんので、そこまで心配する必要はないと思います。とはいえ、無理をしない範囲で仕事を進めていくことが大切ですね。
私も以前、体力向上のために階段の上り下りを始めたところ、膝を痛めてしまいました。反省して、疲れている時はエレベーターを使うようにしています。あくまで体力向上のために頑張るのではなく、体力維持を心がけて無理をしないことが大切ですね。

また、スケジュールを調整すれば、寮から外出することもできます。1時間でも外に散歩に出るなど、自分に合ったリフレッシュ方法を見つけることも大切です。
決して本格的な肉体労働ではないので、本人の気持ち次第で健康維持をしていけば、60代70代の方でも元気に働いている方が大勢います。

——寮長寮母のお仕事は、どんな方に向いていると思いますか?

寮長:寮生との第一印象で重要なのは言葉遣いや表情、笑顔です。18歳で入寮してくる学生を子ども扱いせず、一人の大人として接することができ、お互いにコミュニケーションを取って信頼関係を構築できる方が適しています。
頭ごなしに指示するのではなく、寮生さんの言いたいことも受け入れつつ、柔軟に対応できる方であれば問題ないと思います。

寮母:寮母に関しては、調理のスキルよりはパートスタッフさんとのコミュニケーションを大切にできる方が向いています。関係性が良好だと、さまざまな面でフォローしてもらえるため、業務が円滑に進みやすくなります。

——所属している寮について教えてください。

寮長:約150室の寮で、日本人と留学生が半々程度の構成です。留学生は国籍もバラバラで、国や年齢、性別の垣根を超えて話している姿をよく見ます。みなさんコミュニケーション能力が高く、食堂で一人で座っている日本人学生に声をかけて盛り上がるなど、非常に賑やかです。

基本的に一人で食事をしている学生はほとんど見かけず、必ず誰かと一緒に食事したり、大浴場に一緒に向かったりと、寮生同士の仲の良さを感じます。

寮母:専用寮のため学校の体育館を借りてスポーツイベントを行ったり、歓迎会では100名を超える参加者があるなど、2ヶ月に1回程度のペースで各種イベントを開催しています。

——最後に、寮長寮母のお仕事に興味を持っている方へ、メッセージをお願いします。

寮長:初めての経験で不安に思われるかもしれませんが、入社後は研修寮でゼロから一つひとつ研修しますし、配属先では地区長や主任、会社の業務担当や営業担当、事業部長など、必ずフォローしてくれる体制が整っています。
寮長寮母だけで孤立することはなく、会社全体でバックアップしますので、安心して入社していただければと思います。

寮母:あまり他にない仕事だと思いますが、だからこそ今までの人生では出会えなかった新しい発見や気づきも生まれます。興味を持っていただけたなら、まずは挑戦してみてください。

大変なこともありますが、寮長と一緒に助け合いながらやっていけますし、分からないことがあれば皆さんに助けてもらえるので、不安にならずに安心して飛び込んでみてください。

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